大企業から、インパクトのある資金循環を(SOCAPその後)

プログラム中セッションで談笑するJapan Team

SOCAP日本代表チームのメンバー達が、それぞれが今回の経験を糧に、次のステップへと動き出しています。

 

今回は、三菱商事株式会社 環境・CSR推進部復興支援チームの立石 亮さんにお話を伺います。寄付やボランティア、学生奨学金、NPO助成、そして投融資。被災地での復興支援に様々なかたちで従事してきた立石さん。一方通行で終わらない持続可能な資金循環を創っていくため、社会的投資の登竜門、SOCAPに挑戦した彼の想いに迫ります。

SOCAPに参加した立石さん

SOCAPに参加した立石さん

 

被災地支援の中でぶつかった「壁」

私たちは2011年3月の震災後、100億円の復興支援基金を設立し、4年間に渡り継続的に被災地を支援していくことを決定しました。 しかし、現地に何度も足を運び、寄付やボランティアをしていく中で、「緊急対応型の支援に加え、中長期的な継続性をもった取組みへの支援も求められているのではないか」という問題意識を持つようになりました。寄付やボランティアを中心とした緊急フェーズの支援の先に見えてきた課題は、善意の力を結集して瞬発的になされる取り組みに、いかに持続可能性を付与できるのか、ということでした。 産業が再生し、雇用が増えていかなければ、地域の持続可能な復興・発展はないという状況を前に、人々が望む未来を描くためには、活動の持続性という一種の「壁」を打ち破ることが必要不可欠だと感じたのです。  

 

支援の構造を、もう一歩先へ

もちろん寄付やボランティアは特に緊急フェーズにおいては極めて重要です。ただ、一方通行の資金供給という仕組みだけでは、会社にとっても社会にとっても、十分な持続可能性を確保できないことを、現場で実践を重ねる中で感じるようになりました。 そういった中で、継続的な資金循環の構築に向けて 2012年3月に設立したのが、「三菱商事復興支援財団」でした。元々行っていた寄付・ボランティアベースの支援と同時並行で、地元の金融機関等と協働し、被災地域の企業への投融資を始めました。投融資を通じて、 産業を興し、雇用を拡大していくような中長期の継続的支援の実現にチャレンジしてみようと思ったのです。 支援先には、10年後を見据えた事業計画や返済計画を立ててもらいます。 「返さなくてはいけないお金」であるが故に生まれる適度な緊張感が、事業の継続を支えていくことにつながると考えたからです。 こうして 、投融資というカタチで、寄付では入り込めない領域への支援に踏み込んでいきました。例えば、第1号案件のキャピタルホテル1000の再建事業などがそうですね。少しずつ、持続可能なカタチでの循環型支援というのが見えてきています。  

 

会社と社会が共に成長していく仕組みを創りたい

さらに、東北で蓄積している投融資の経験を、元々三菱商事が行っている社会貢献や寄付活動と結びつけながら、更に発展させていけないだろうか、ということを考え始めました。 そうして行き着いたのがSOCAPのテーマでもある「インパクトインベストメント」という領域でした。 私たち企業組織は、地球環境であれ、現地のコミュニティであれ、何かしら社会と接点を持って存在しています。収益を上げることを前提に、どれだけ社会に価値を生み出し、貢献していくか。もっと言うと、社会が成長していくことで、私たちも一緒に成長していけるような仕組みを創っていく必要があると考えています。 そういった仕組みの最先端に触れる機会として、さらにはその仕組みを活用した具体的な取り組みを一緒に創っていけるようなパートナー探しの機会として、SOCAPはとても魅力的でした。  

 

先駆者に突っ込まれながら感じた、確かな手応え

SOCAPでは、既に投融資実績を持つプレイヤーを中心に10数団体と事前にアポを取り、直接話をしました。 とにかくよかったのは、この領域で実際に投融資を行っているプレイヤーに自分たちの事業に対してのリアクションをもらえたこと。復興支援における投融資の取り組みはある程度評価してもらえた一方で、新たな展開については、組織としてまだ決めきれていない部分をかなり突っ込まれましたね。投資ステージや具体的投資領域、インパクトファーストかファイナンスファーストかなど、具体的な協働について前向きな団体ほど、投融資のスタンス全般に関して細かく質問してきました。 その肌感覚は、現地の前向きで野心的な雰囲気の中で実際に話をしないと得られないものでした。 何度も何度も自分たちの事業を語り、彼ら先駆者との会話を繰り返していくことで、会社として次にやるべきことがぼんやりと見えてきました。帰国後も、そのネットワークは活きていて、電話会議などを続けている相手もいます。 私たちの新たな取り組みはまだまだ不確定要素が多い段階でしたが、こうしてコンタクトを続けてくれている多くの団体はそのビジョンと可能性に興味を持ってくれたのだと思います。このように僕らの背中を押してもらえることに、確かな手応えを感じています。  

 

 

ご一緒させて頂いた三木さんが所属されているベネッセコーポレーションもそうですが、おそらくファンドや財団をつくろうとしている日本企業にとって、これほど有意義なチャンスはないと思いますね。

 

 

この資金循環を、世界へ

今回のSOCAPで、課題や次のステップが明確になり、新たな取り組みは大きく前進しています。まずは、地域や具体的投資領域など、SOCAPで質問されたようなポイントを固め、着実に案件を構築していきたいです。SOCAPでつながったパートナーとも具体的に話を進めていけたら面白いですね。 社会課題を解決していくビジネスへの投融資が、その地域やコミュニティの発展に寄与し、新たな市場創出につながっていくのだと思います。寄付か利益追求型の投資かという二元論を越えて、持続可能な資金循環を創っていくことが、少し壮大ですが今の目標です。

(インタビュー終わり)

 

「意志」を持った「お金」の使い方を考える投資家たちと社会にインパクトを生むビジネスを創りだす起業家たちが出会う場、SOCAP。世界中から集まる2000人の先駆者達と共に、あらたなムーブメントのうねりを感じてきた参加者達。 彼らが口をそろえて、SOCAPに参加する醍醐味の一つは「先駆者達と本音で話が出来ること」だと言います。インパクトインベストメントを代表するようなファンドや財団であっても、話をしてみると、実はあまり上手くいってないんだよね、とか、こういうこと考えていて試そうと思っているんだ、という話になったりします。このオープンさはサンフランシスコならではなのかもしれませんが、立石さんもこういった「ぶっちゃけトーク」から得た収穫が大きかったようです。成功談も失敗談もさらけだし、コミュニティ全体でプラクティスを共有していくようなカルチャーに、Social Capital Marketのムーブメントを押し進めていく秘訣があるのかもしれません。

関連記事

ページ上部へ戻る
Top