起業がうまくいかない時に立ち返る原点とはー自分だけの「WHY」をもつ大切さ

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 人はなぜ起業することを選ぶのか。自らの夢を追いかけた結果という人もいれば、会社や上司に縛られることに心底うんざりしたからという人もいるかもしれない。

 では、起業して手に入る生活とはどんなものだろうか。ひとつ確実に言えることは、会社員とは比べものにならないほどの圧倒的な困難が待ち構えているということだ。

 毎日、何が起こるか分からない不確実性に満ちた朝を迎え、栄光からも失敗からもかけ離れた仕事を地味にこなす。そして時として、人生最高の日を迎えたと思ったら、次の瞬間には人生最悪の日を味わっている。ある日はヒーローになったのに、次の日にはどうしようも無い人間に成り下がる。そんな日々を過ごすことが、起業家として生きるということだ。

 そんな起業家が燃え尽きる現実の姿を、以前このメディアでも紹介したことがある。(参考URL:起業家が必ず直面する厳しい現実と、燃え尽きを防ぐための4つの方法

 しかしそれでも、なぜ人は起業することを選ぶのだろうか。道なき道を行く彼らの背中を支えるものは何なのだろうか。今回は、起業家たちが、それぞれのミッションに基づいた事業を行うために必要な「WHY(なぜ自分がその事業を行うのか)」を自らに問いかけ続ける大切さについて書かれた記事を紹介したい。

 元記事の執筆者は、スタートアップのメンターとして活躍しながら、NYでコワーキングスペース、AlleyNYCを運営する起業家、ジェイソン・ソルトマンである。

元記事:`The Power of WHY in Becoming an Entrepreneur’  「WHYのチカラーアントレプレナーであるとは」

起業家であるとは何を意味するのか

 記事冒頭で、ジェイソンは読者にこう問いかける。「起業家であるとはどういうことだろうか」と。

 「起業家」と聞いたら、多くの人は、人を組織して、管理し、事業リスクを予測して会社を経営することを想像するかもしれない。何も無いゼロベースから、企画し、実行して、何かを創り出していく。そんな姿を思い浮かべるかもしれない。

 しかしはっきり言おう。そのイメージ像は誤りだと。「起業家である」ということは、「その日に何が起こるか分からない日々を、延々と過ごしていくということ」であり、それはまるで「パラシュートをつけずに崖から飛び降りるようなもの」であり、さらに、「人生が崩壊するか、億万長者になるかのぎりぎりの瀬戸際に立つということ」だ。

 起業家として過ごす日々はまるで、時に胸が張り裂けるような悲しみや、沸き立つような栄光、度重なる終わりのないストレス、さらには満足感で胸を一杯にしながら、日々を感情のジェットコースターに乗って過ごすようなものなのだ。

 そしてそれはまるで、「最悪な戦争」の様相を呈す、とジェイソンは語る。起業した者にしか分からない、精神的にも肉体的にも非常にタフな日々を延々と生きるということが、起業家であるという意味なのだ。

なぜ私たちは起業家であろうとするのか 

 多くの人はここでこう思うだろう。「どうしてそこまでして、起業しようとするのか」と。また、これを読んでいる起業家自身も、自分に問いかけるだろう。「なぜ、自分は起業家になろうとするのか」と。

 日々心身共に消耗し、次から次へと湧いてくる膨大な課題の海の中を転げまわり、それでももう一度起き上がって、なぜ再び全てをやり直そうとするのだろう。そうまでして、何故、起業家であることを諦めようとしないのだろうか。 

 最もよくある誤解は、起業家はその事業を、「お金の為にやっている」という考え方だ。もしこの記事を読んでいる人の中で、お金を稼ぐことを目的として、この狂った日々に身を投じようとしている人がいたら、いくつか質問させて欲しい、とジェイソンは言う。

 もしあなたがどこかの島にある豪邸のことや、高級車のことばかり考えていたら、一体どうやって顧客に対して、価値を提供することができるのだろう?

 もしあなたが何億ドルものマーケットシェアを夢見ながら、どうやってそれに投資するかだけを考えてただそこにぼんやりと座っていたら、一体どうやってユーザーエクスペリエンスを最大化するアイデアを思いつくのだろう?

 あなたがそうやって未来の栄光に思いを馳せているその瞬間にも、顧客はあなたの助けを求めているし、今提供しているサービスよりも、より良いもの、より良いユーザーエクスペリエンスを求めているのだ。

最も大切なことは、「WHY」という問いに答え続けること

 ここでもう一度、先程の質問に立ち返ろう。「もしお金のためでないなら、ではなぜ私たちは、いま自分が、これをやっているのか。」

 この質問への答えは、質問そのものにある。つまり「なぜ自分がこの事業をやっているのかを、他でもない自分自身に問い直すこと」に凝縮されている。

 この「WHY(なぜ自分がこの事業をやっているのか、やろうとしているのか)」を自らに問いかけ続ける意識は、事業を起こすときに、何よりもかけがえのない、大切な意識だ。なぜなら、この意識を何度も何度も自らに問い続ける中で、見えてくる想いこそが、その後に待ち受ける、長く続く、辛く苦しい日々をなんとか凌ぐ支えとなるからだ。

 この意識は、起業家が心配と不安で眠れない夜をなんとか越して、最高の製品やサービスを創りだすことに向けて、勇気を奮い立たせてくれる力となる。もしあなたが自分の「WHYの意識」と深く向き合い、その本質を知り、深く理解していれば、その先起こってくるどんな問題や課題に対しても、それに対峙して応えていく原動力となるだろう。

 起業した後に、度々襲ってくる不安は数知れない。自分がやっていることが本当にミッションの達成に繋がっているのだろうかという葛藤や、日々降り掛かってくる意思決定の嵐、チームとの摩擦など、何もかもが八方塞がりとなった時でも、何度でも立ち返る原点を、この「WHYの意識」と向き合うことで創りだすことができるのだ。

互いの「WHY」を知ることが、素晴らしいコラボレーションへとつながっていく

 そして、この「なぜ自分がこの事業をやっているのか、どんなミッションをもっているのか」という意識は、そのままその人の価値観となって、他の起業家と共通の価値観でつながる可能性をうみだしてくれるのだ

 ここには素晴らしい可能性が秘められている。なぜなら、様々な理由で分断され、境界線で区切られた現代社会に生きる人々が、互いの「WHY」を知ることで、違いを超えて、コラボレーションを生みだしていくことができると、私たちに教えてくれているからだ。

 ジェイソンも記事の中で、彼がアメリカ国務省で働いていた時の経験を述べている。それは、完全に異なる文化が出会い、そしてそこから世界中で使われる製品が生まれていくのを目撃したと語る。

 「私は、学生たちがある問題を解決するための、課題解決手法を学んでいるのを目にしました。その手法は、まさに学生たち自身の文化圏とは全く異なる文化圏から、ひらめきを得て開発されたものでした。つまり、パレスチナのガザ地区に爆弾が落とされている最中、若いパレスチナ人の起業家たちが、遠く離れた地にいるキリスト教の青年と相談しながら、テック系の製品を作っていたのです。その光景は、素晴らしい意味のある繋がりでした。それから、わたしにとっては、このような「WHY」に基づいた起業家精神で世界を繋げることが目標になりました。」

自らの「WHY」をもつことが、背中を支えてくれる

 「自分がなぜその事業をやっているのか」を問い続ける意識をもつことは、起業家が日々をなんとか続けていくことに向けて、背中を押してくれる力となる。また、日常的に直面する様々な状況において、自分を支え、助けてくれる。

 例えば顧客や投資家から投げかけられる厳しい質問に答える時、そして自分のビジネスやコミュニティに対して、何がしかの決断を迫られた時に、いつも軸をぶらさず、ミッションを見失わないまま、事業を続けていくための支えとなるだろう。

 時として幾つかの決断は、その時はベストでは無いように見えるかもしれない。しかし、この「WHYを問い続ける意識」を持っていれば、自分も他人もごまかさずに正直であり続けることができる。そしてそれは、あなたが前に進むことを助けてくれる。

 ジェイソンが最後のアドバイスとして述べていることは、これから起業を目指す人も、既に起業している人も、あなた自身の「なぜその事業をあなたがやるのか」という自分の「WHY」に真正面から向き合い、もっともっと深掘りして、突き詰めて欲しいということだ。

 そしてそこに情熱を見出し、「WHY」の裏にある、何のために自分はその事業を行うのかという目的を感じ、学んで、腹落ちしたら、その後は、決してその自分だけの「WHY」を見失わずに、進んでいこう。

(冒頭写真:Photo by Bart Everson

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