ホームレス支援の新たな打ち手、ハウジング・ファーストとは

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 年末が近づいている。この時期に毎年私が気懸かりとなるのは、路上で暮らすホームレスの人々のことだ。役所が閉まるお正月期間のあいだ、NPOなどが炊き出し等を通じてサポートする活動も恒例となりつつある。今回はホームレス支援の分野において、数年前から欧米を中心に話題になっている取り組み、「ハウジング・ファースト(Housing First)」について取り上げたい。

 ハウジング・ファーストとは、ホームレスの人々にまず彼らが安心して暮らせる家を提供し、後から必要な支援を行うという考え方だ。この取組は従来のステップアップ方式での支援よりも、優れた支援方法としてアメリカで注目され、その後欧米を中心にホームレス支援の基本的な手法として広まりつつある。

 路上生活からの脱出策として、まずシェルターで集団生活を送り、その後グループホームで徐々に社会復帰に向けての生活の仕方を学ぶというステップアップ方式だと、途中で脱落してしまう人々が多い。これに対して初めに住居を提供するハウジング・ファースト方式の場合、コスト削減に明確につながるという調査結果がアメリカで出たのだ。
(参考URL:http://diamond.jp/articles/-/60007?page=4

 国内での実例はまだまだ少ないが、アメリカでは行政やNPOが連携しながら取り組みが進んでいる。そんなハウジング・ファーストを巡る近年の話題のなかで、シリコンバレーでの面白い取り組みがあったので紹介したい。
(元記事はこちら:http://www.triplepundit.com/special/tech-titans/an-up-close-look-at-homelessness-in-silicon-valley/

シリコンバレーの住民の5%がホームレス経験有りと回答

 シリコンバレーと言えば、名だたるテック系企業が拠点を置く土地であり、近年アメリカにおいて地価高騰が著しい地域だ。そんな土地においてもホームレスは存在し、2007年から2012年にかけて実施された調査によると、サンタクララ郡に住む住人の、実に5%にあたる104,206 人が、安心して暮らす家を失った経験があると答えている。

 そしてこれらの人々を支援するために、行政は毎年52億ドルもの費用を投入しているのだ。費用の内訳は主に、ヘルスケア、社会復帰サービス、刑事裁判費などだ。

問題解決に向けて連携を始める地域コミュニティ

 2013年にDestination:Homeはホームレス問題の解決に向けて動き出す。この団体は、サンタクララ郡のホームレス問題解決のために行政や地域コミュティが連携して取り組むプログラムのひとつだ。

 Destination:Homeは2800人のホームレスの人々(これは永続的に家がない状態で、しかも頻繁に公共サービスを使用する人々)を対象に調査を実施。その結果、もしこれらの人々に永続的に住める家がある場合、最大で75%ものコスト削減につながるということが判明した。

 この調査結果は地域を動かした。行政とインパクト・エージェンシーは2020年までにすべての人々に家を確保することを約束したのだ。今年9月、サンタクララ郡とサン・ホセの行政は、モーテルとホテルを長期的な住居としてリノベーションするために1300万ドルの予算を確保した。

シリコンバレーの街ならではのテックを用いた支援策が面白い

 ここまでだとよくあるホームレス支援の話題なのだが、さすがテックの街!と言えるような支援策についても、この記事のなかでは触れられている。どういうことかと言うと、この問題の解決方法にテックを用いることで、単なる社会課題解決ではなく、フィランソロピーを超えた、新たなマーケットチャンスに変えていこうと志向する投資家やアントレプレナーたちを惹きつけているのだ。

 テクノロジーを用いて全米の人々のクオリティ・オブ・ライフを向上させるようなシステム・チェンジを起こそうとする、アーリーステージの起業家に投資するファンド、Impact America Fundは最近、サンフランシスコを拠点とする企業、HandUPに20万ドルを投資した。

 HandUPは直接寄付型のオンライン・プラットフォームを運営しており、個人の寄付者がダイレクトに、地域のホームレス、もしくは低所得者層の生活にインパクトを与えることができるというシステムである。

 HandUPのサービスが面白いのは、単に寄付者とホームレスや低所得者層の人々を繋ぐだけでなく、さらなる支援に向けて、国内の信頼できる支援団体のケースワーカーにもつなぐという点だ。リソースや言葉のサポートによって、寄付したいと願う側のコミュニティは、支援が必要な人々の、その時々のニーズに応じてセーフティーネットを張ることができる。テックというツールが、ホームレスの人々と地域コミュニティに新たな関係性を築き、ホームレスの人々の孤立を防ぎ、社会復帰をサポートする役割を果たしているのだ。

シリコンバレーに見る、その街らしさ溢れる発想の大切さ

 2013年にサービスを開始してから、HandUPはサンフランシスコにおいて1200人のホームレスへ、95万ドル以上の直接的な寄付を促進してきた。HandUPの共同創業者、Sammie Raynerは、自分達のことを、「ホームレス問題を解決するためのツールボックスを提供している」のだと語る。

 シリコンバレーは問題解決のための才能と方法の両方を持ち合わせている。Destination:Homeの執行役員、Jennifer Lovingは次のように述べる。

「私たちはプライベートセクターのチャンピオンシップを求めている。ホームレス人口の拡大に伴って多くの問題に直面しているが、私たちはそれと同じくらい多くの解決策も持ち合わせている。他の街は同じことは口に出来ない。」

 テックの街は自分達らしい方法で、ホームレス問題に取組んでいる。どこまでも問題は山積しているが、チャンピオンシップとその街らしい発想でどんな問題でも解決できるとシリコンバレーは教えてくれている気がする。

 年越しを控え、暗澹たる思いを抱いた人々がすぐ身近にいるという現状に対して、私は何ができるだろうか。日本という国で、東京という街で、「自分らしい」一歩を解決に向けて踏み出していきたい。 

 

(冒頭写真:Photo by Per Gosche

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