シェアリングエコノミーが生む「独占」現象ーAirbnbが市場を変える

monopoly of share economy

 今年、SOCAP というカンファレンスに行くことがきっかけで、私たちはサンフランシスコで5つのAirbnb物件を借りるという、普通の個人旅行や、旅行代理店ではしないようなことをした。

 実際には8〜10物件と交渉をし、最終的に5つの物件に落ち着いたが、毎年そんなことをやっているせいもあって、今年はなんだか違うと感じた。

 

中小業者が大量流入でテンプレート化

 予約したうちの数件はアットホームな対応で個人オーナーだとすぐにわかったが、何件かは決まり切った会話のテンプレートや鍵のシステムなどが統一されていた。情報量や丁寧さはよかったのだが、最終的にオーナーの顔をみることはなく、Airbnbを使った醍醐味を感じられなかった。

 ひどいものは同じ通りの2物件を借りたのだが、メッセージのテンプレートが全て一緒。オーナーはJasonとNaokoだったが、結局のところ彼らに会うこともなかったし、彼らがオーナーではないことは確かで、どこかの業者のスタッフであることは一目瞭然だった。

 実際にサンフランシスコの住人たちに聞くと、スモールビジネスや個人オーナーとしてやっている人たちもいるが、Airbnb物件のほとんどが投資用の物件を持っているオーナーたちに、中小業者が空きを埋めるために提供しているサービスだとわかってきた。

 

Airbnbが街の構造を変えた

 滞在中、SOCAPでシェア経済のトピックが上がった際、衝撃的な言葉に出会い、唸らざるを得なかった。シェア経済によって作られ始めた新しい社会契約のあり方に焦点を当てるセッションもあったが、人々の会話の中で、「ナチュラル・モノポリー(自然な独占)が起きている」という言葉が発せられた。

 AirbnbやUberなどはそれこそ、「資産をシェアをしよう」という思想からスタートし、その後、スモールビジネスや個人オーナーを応援することで事業モデルを成立させるようになったが、現在、次のステージとしてスモールビジネスの領域を超える事業者が大量に流入し、その質やサービスの良さで自然淘汰が始まっている。

 それがさらには、サンフランシスコの街の様子を変えようとしている。いまや、サンフランシスコの住宅街の多くが、富裕層や新興富裕層によって投資物件として購入され、賃貸よりも良い収入が得られるAirbnb物件になってしまった。

 確かにサンフランシスコを見渡すと「がらんどう」だ。Airbnbでサンフランシスコの地図を見ればわかるが、いたるところに物件がある。だがよく考えると、そこには普段人は住んでいない、ということを忘れてはいけない。さらに、Airbnbで貸し出す方が高収入になるため、その周辺の賃貸価格が高騰した。

 
逃げ出すコミュニティ

 サンフランシスコは、信じられないくらい賃貸価格が高騰している。もともと、AppleやFacebookなどの社員であるヤング・プロフェッショナルたちが大量流入したことで賃貸価格が高騰したのがきっかけで、元々住んでいたコミュニティは分断され、皆逃げ出した。

 私の知り合いも元はミッション地区に住んでいたが、逃げ出し、オークランドに住んでいる。いまや「オークランドの方がクリエイティブ」になりつつある。そして、ミッション地区はヤング・プロフェッショナルに占拠されつつある。

 追い討ちをかけたのがAirbnbの事業者と投資用物件たち。元はBen & Jerryの発祥地やジェリーガルシアの地として有名なハイト&アシュベリー交差点のあたり、もいまや高級住宅地投資用物件で混雑し、住んでいる人は激減している。以前、その地域で元ヒッピーで成功した医師の家に泊まったが、ボロボロの地域が本当に変わり、今はコミュニティはなくなったと語っていた。局地的かもしれないが、自然な独占は始まっている。

 

ユニコーンバブルの影響が大きいか?

 Airbnbのヘビーユーザーであり、かつ、会社でAirbnbをがんがん使っていたところ、Airbnbからコンタクトがあり、「Airbnbビジネス」を使わないかと言われ、使い始めることにした。実際これは前から欲しかった機能・サービスである。

 Airbnbはいまや個人オーナーやスモールビジネスの領域を出て、企業対企業のやりとりに積極的に力を入れているように思える。物件提供者側にプロが増えた分、お客側の企業もきちんと対応し、ビジネス出張につかってもらおうということだろうか。

 Airbnbもユニコーンの一つ。(ユニコーンとはシリコンバレーにおけるスタートアップの中で、資金調達を何度もして成長し続けている数少ないスタートアップのこと)1年に何回も資金調達するというから驚きである。怪物のような成長ぶりと言われるのもうなずける。だが、その資金の流れが、サンフランシスコの街の姿を変えたのと関係しているのではないか、と勘ぐってしまうのも無理はない。

参照URL:
「過熱するユニコーン投資。ドットコムバブルの「亡霊」が見える」
https://newspicks.com/news/987327/

 

日々の線引きの中でミッションを保ち続ける

 一方で、Airbnb本社の社員たちがマーケティングの関係で日本にきた時には、Impact HUB Tokyoで一緒にセッションをしたり、個人的に、そして、ビジネスとしても、おつきあいを続けている。

 その彼らとの会話の中では、Airbnb社員一人一人は、どんなにバブルで怪物のように成長した組織の中にいても、「自分たちはシェア経済を広めようとしている」という伝道師的なミッションを忘れていなかった、と私たちは感じた。

 今後、起きうるシナリオは、よくフリマで見られる「業者禁止」のルールと一緒だが、「フリーマーケットに業者が入ってきてぶち壊してしまった」という事態だ。だが、社員はそれについても、日頃から色々考えている様子だった。毎日考えながら、まだ回答はないのだろう。

 

市民が持つべき、シェアエコノミーと付き合う思想

 すでに、サンフランシスコだけでなく、東京では湾岸地域でも「自然な独占」が始まっていると噂されている。これからも、様々な都市の局地的な部位で、その傾向は見られていくだろう。

 一方で、パリでは規制がかかりはじめている、という。街一つ一つにおいて、カルチャーが発生するのも面白い。Airbnb側でルールをつくるような「上から規制」ではなく、ある意味、各国・各都市の市民たちの反応や思想、そして自由市場のあり方に身を委ねることで、付き合い方を決めていくものかもしれない。

 AirbnbやUberのグローバルな動き自体が新たな独占スタイルを生むのではない。それに呼応する人間の質や行動がものをいう。仕組みを作り出した人たちのせいだけではなく、それを使う人たちがどこまで深く考えて購買、販売などを行えるかが、街の命を最終的に預かる時代になってきたということだろう。

 

Photo By: Geof Wilson

この記事の執筆者

槌屋 詩野Impact HUB Tokyo共同創業者Twitter:@shinokko
2012年よりインパクトを作り出す人たちの拠点「Impact HUB Tokyo」を設立。2013年より起業家育成プログラムを設計、海外のプログラムのローカライゼーション・アドバイザー、企業の社内起業家育成スキームの設計、また、企業ベンチャーフィランソロピー分野で投資アドバイザーとして活動。

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