社会的企業に転職するのに必須の3つのスキルとはー CEOが求める人材の条件

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 「ソーシャル・エンタープライズ(社会的企業)のスタートアップで働きたいんですが、どうしたらいいですかね?」最近、学生や第二新卒の世代の人たちから、こんな相談を受けるようになった。そういう情報が世の中に少ないらしい。

 そこで本日は、Nextbillion.netに掲載された「”Want to Work at a Social Enterprise? Stand out with these skills”(ソーシャル・エンタープライズで働きたいの?ならこのスキルを磨け!)」の記事をご紹介しよう。

 この記事はImpact Business Leadersというソーシャル分野の転職やキャリア相談をするコンサルタントが執筆。(アメリカには、そういう分野のキャリア・コンサルタントが誕生するようになったということだ!)

 このコンサルティングで支援した人たちの多くは、成長真っ盛りの若い社会的企業において、中間・シニアマネジメント層の職を得たそうだ。本記事は転職向けなので、第二新卒世代で、社会的企業やスタートアップのマネジメント職に就きたい人は是非参考にしてほしい。

お金について強いのは当たり前

 これはスタートアップなら社会的企業であろうがなかろうが、当然のように要求されるのが、「お金をちゃんと扱えるか」ということ。Nextbillion.netでは「特に、あなたが途上国のソーシャル・エンタープライズで働きたいと思っているなら、資金的に不安定になる会社がほとんどなので、全員必須」と強調されている。

 とはいえ、ファイナンスに関する資格や経験が必要というのではないからご安心を。スタートアップの時期は「金銭的な持続可能性に対して、社員全員がそれなりに知識がないと困る」ということのようだ。

 社員全員に経営の観点が問われるため、キャッシュフローによる経営や金銭的な資源について、ケアが行き届いている人たちでないと、あっという間に経営的に危なくなる。危機感と覚悟が必要ということだ。

 なので、人事とか、テックとか、マーケティングとか、事業開発とか、いくらあなたがファイナンスとは無縁そうな分野の仕事をしようとしていたとしても、少しでもファイナンスの知識があり(そして、知識があるだけでなくて)プロジェクトごとのキャッシュフローをきちんとトラックできるような能力があれば、どこに行っても市場価値の高い人材としてみてもらえるということだ。

分析もできないと厳しい

 キャッシュフローをトラックできるだけで満足できないのが、社会的企業の難しさ。社員全員に「新規の事業分野を開拓していく」ような能力も問われているので、単にトラックするだけで満足していては物足りない。

 できれば、キャッシュフローや様々な数字、KPIなどを眺めながら、「どんな事業をしていけばいいか?」「どこを強化していけばいいか?」というのを、戦略的に判断し実行計画を作る能力も求められる。

 さらに、社会的企業の場合は、金銭的な数字だけを見た戦略ではなくて、インパクトの測定から出てきたKPIや、環境負荷の数値なども取り扱い、分析力を駆使して、複合的に戦略を練ることが求められる。

新市場をつくる能力は社員全員に必要

 特に社会的企業は、商品やサービスを購買することが難しいような層に、きちんと価値を認めてもらい提供することになる。その場合、ユーザーからの反応やマーケティングデータの分析を見誤れば、誰も買ってくれない商品やサービスになりがちだ。

 また社会的企業はほとんどが「新市場」である。そのため、新市場に進出する事業と同じだと思ってもらった方がいい。顧客、関係者、寄付者、投資家などのステークホルダーに、その新市場の価値を理解してもらうためには、分析能力が長けていないと困る。

 そう言った能力もCEOだけに求められるのではなく、アーリーステージのスタートアップの場合は、社員全員に求められるのだ。

リーダーシップとチームのマネジメントが全て

 最後に、成長期にあるスタートアップ、社会的企業では、リーダーシップを発揮できる人で、チームのマネジメントができる人が重宝がられることがほとんどだ、と言う。

 理由として、チームが拡大し、創業者チーム自身がマネジメントをする限界を超えており、創業者チームのミッションを背負って彼らと同じくらいリーダーシップを発揮しチームをまとめることができる人が、組織の成長ステージとして必要になっているからだ。

 特に、筆者の経験でも、日本では5人〜10人の規模を超えたスタートアップや社会的企業には、リーダーシップのある社員が必須となる様子。大概、そのステージの企業の人材募集では、チームマネジメントができる人を切望している。

 日本だと「大学時代のサークルでの経験」などをついついネタとして面談に持ってきてしまう人もいるかもしれないが、正直それでは社会的企業やスタートアップではアピールに欠ける。マネジメントしたチームにより多様性があればあるほど、価値の出る時代になっている。そう言った経験を積んで、きちんと振り返り、言語化して備えておこう。

それらのスキル、どうやって身につける?

 ファイナンス、分析、チーム・マネジメント。この3つのスキルは学びに行って身につけられるものではない。学生には難しいスキルだ。だから、自分の今の仕事や生活の中で、近いものを見つけて行こう。

 例えば今の職場や社外のボランティアで、プロジェクトベースで活動してみてそのような役割を演じてみる。ワンショットでもいいから、プロボノのコンサルプロジェクトに参加してみる、などでもいいかもしれない。

 日本でもプロボノ団体やプロボノ参加できる組織は増えている。SVP Tokyoサービスグラントビジネスロイヤーズプロボノネットワーク(BLP-Network)Accountability for ChangePVプロボノLiving in Peace、など。

 または、実践型のプロジェクトができるコースなどを受講しながら、身につけてもいいかもしれない。(アメリカにはそういうコースがあるようだ)いずれにしても実践しながら身につけられるものがベストであり、それなしでは、スタートアップや社会的企業志望の場合、即実践の際に役立たないものがほとんどだ。

 また、自分の今の仕事ではそういうスキルを身につけられない環境にいる人も多いかもしれない。(学生の人などはそうだろう)その場合は、ジュニアな職種になるかもしれないが、今から社会的企業に転職してしまって、それから長期的にキャリアプランを考えよう。やはり現場で実践を積む方が、長期的にはうまくいく、とコンサルタントは語る。

社会的企業やスタートアップが本当に自分に合うか

 こういった社会的企業では、確実に、「複数の役割を演じきれること」が求められる。ビジネスモデルを進化させていくために必要なジェネラリスト的な役割を求められると同時に、高度な特化したスキルを求められる場面もあり、多様なニーズに対応することが必要とのこと。

 だが、「複数の帽子をかぶる」ことはマルチタスクにもなるし、ステークホルダーごとに切り替える必要が出てきて、本当に疲れる仕事であることには間違いない。人により向き不向きもあり、ストレス耐性も高くないとできない。

 こうした複数の役割をマルチタスクで演じきっていくという仕事が、自分が向いているとは思えない場合、もっと成熟した大きな企業での役割や、もう少し大きめのベンチャーで、一定の専門的・特定的な役割を担う方がいいかもしれないので、もう一度考えてみて、とコンサルタントは付け加えている。必ずしも社会的企業やスタートアップに行くことだけが、自分のミッションを完遂する手段ではないはずだから。

必要とされるスキルが異なることを自覚して

いかがだったでしょうか?

 筆者が驚きだったのは、「もし自分が3つのスキルを身につけられない場所に今いるなら、さっさと辞めて、それらを身につけられる社会的企業やスタートアップにジュニア職でもいいから飛び込め」というメッセージ。

 日本では逆に「大企業で力をつけてから」と盲目的に言われるが、上記3つのスキルを身につけられる場を得られるまでに耐え忍ばないといけないことがほとんど。必要とされるスキルが違うから当然のことなのに、既成概念にとらわれて合理的に考えることをさせない風潮が漂っている。

 また、「もし3つのスキルが自分に合わないなら、転職自体を考え直せ」というメッセージも、至極真っ当だ。転職でスタートアップや社会的企業を志望する方などは、DRIVE仕事百貨Wantedlyなどで仕事を探している人も多いはず。とっさの感情的な判断で応募してしまう前に、一息置いて、上記のようなスキルや環境を考えて、自分の適正を考えてみてほしい。

参考URL:
http://nextbillion.net/nexthought-monday-what-to-work-at-a-social-enterprise-stand-out-with-these-skills/

(冒頭写真:Photo by Ted Eytan

この記事の執筆者

槌屋 詩野Impact HUB Tokyo共同創業者Twitter:@shinokko
2012年よりインパクトを作り出す人たちの拠点「Impact HUB Tokyo」を設立。2013年より起業家育成プログラムを設計、海外のプログラムのローカライゼーション・アドバイザー、企業の社内起業家育成スキームの設計、また、企業ベンチャーフィランソロピー分野で投資アドバイザーとして活動。

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