グローバル企業のCSR【前編】課題と次なる一手とは

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 グローバル企業は、CSR活動を通じてNPOや社会起業家などのアクターと広くパートナーシップを築いてきた。そうしたパートナーシップが、今では当たり前になってきた一方で、その課題も見えてきた。単なる社会貢献に留まらない、CSRの「本業」への貢献やシナジーを求める潮流が格段に強まってきている。

 グローバル企業のCSR活動で培われてきたネットワークを、いかに事業部の成長に繋げていけるか?「グローバル企業と社会的企業のパートナーシップ」について書かれたアキュメンの新レポートを手掛かりに読み解いていきたい。

グローバル企業のCSR担当者たちが抱える悩み

 昨今グローバル企業にて膨れ上がってしまったCSR活動の数々。しがらみから寄付を提供し続けなければならない関係性に陥ってしまい、開始から数年も経っているにもかかわらず、いつ寄付をやめていいか分からないなど、すべてを整理するときが来ている。

 そんな中で、本当に「我が社らしいCSR」とは何だろうか?また、事業部とのシナジーを期待できるCSR活動は何であろうか?そういった問いかけをもとに、CSRの「選択と集中」とが常に議論されているようだ。

 CSR部門から事業部へ。いままで培ってきた活動やネットワークを、インフォーマルな形で繋ぐだけでなく、よりシステマチックな形で繋げないか、と考えているグローバル企業のCSR関係者は多いはずだ。

アキュメン(Acumen)が提唱する、パートナーシップ 2.0

 今回、注目するのは社会的投資ファンド、アキュメン(Acumen)の新レポート。これは社会的投資ファンドが、投資先の社会起業家たちが、これまでグローバル企業と築いてきたパートナーシップの様子を観察しなが、それらのトレンドを分析したレポートだ。

参考URL: http://acumen.org/wp-content/uploads/2015/10/1502_AcumenSummitReport_092115Finalv2_pgs.pdf
Acumen「Social Enterprises and Global Corporations Collaborating for Impact with Growth(『社会的企業とグローバル企業ー成長できるインパクトのための協働ー』)(2015)」

 ここで取り上げられるのは、グローバル企業と社会的企業(ソーシャル・エンタープライズ)の、よりスマートなパートナーシップの形であり、それこそ「パートナーシップ 2.0」だ。

レポートから見る、グローバル企業と社会的企業の補完関係

Acumenのレポート「Social Enterprises and Global Corporations Collaborating for Impact with Growth」より筆者作成

Acumenのレポート「Social Enterprises and Global Corporations Collaborating for Impact with Growth」より筆者作成

 上記の図は、アキュメンがレポートで示した、グローバル企業と社会的企業それぞれの強みと弱みの補完関係だ。新しいイノベーション創出のためのリスク許容度、カスタマーへの理解とマーケットへの理解については、グローバル企業より社会的企業が強みを持つ部分と言える。

 一方、バリューチェーンやカスタマー・ネットワーク、お金や人員などのリソースについてはグローバル企業が強みを持つ。このような補完関係にあることを理解すると、グローバル企業と社会的企業は、相互にWin-Winの関係を実現できるパートナーシップを形作っていけると言えるだろう。

社会的企業とのパートナーシップの形

 アキュメンがここから示すのは、次の3つのグローバル企業と社会的企業のパートナーシップの形だ。これらはそれぞれ、「スキル・パートナーシップ」、「チャネル・パートナーシップ」、「ベンチャー・パートナーシップ」として分類される。

Acumenレポート「Social Enterprises and Global Corporations Collaborating for Impact with Growth」より筆者作成

Acumenレポート「Social Enterprises and Global Corporations Collaborating for Impact with Growth」より筆者作成

 一つ目の「スキル・パートナーシップ」は日本でもお馴染みの形かもしれない。絶えず人員不足に悩まされる社会的企業に、グローバル企業が人員を派遣する。そのスキルと経験を提供する一方で、グローバル企業は社員への機会提供及び新しいマーケットでの知見を得る。国内でも実際の例として、NPO法人クロスフィールズの留職プログラムや、PwCの認定NPO法人Teach for JapanへのCFOの派遣など、すでに実践が始まっている分野だ。

 二つ目の方法は「チャネル・パートナーシップ」。社会的企業が編み出した新しいプロダクト・サービスを、グローバル企業のチャネルに乗せて一気にスケールを目指す方法だ。これもイメージしやすい形かもしれない。アキュメンのレポートでは、ソーラー・ランタンのd.lightとユニリーバの事例が紹介されている。

グローバル企業のCSR。次なる一手は、インパクト投資。

 そして最後の方法が、「ベンチャー・パートナーシップ」だ。グローバル企業が、社会的企業に資金提供をする事例。いわゆる企業による「インパクト投資」だ。アキュメンのレポートでは、コカコーラが、ウォーターヘルス・インターナショナル(Waterhealth International)に出資した事例が紹介されている。

 安価で安全な飲料水を提供できる、水処理工場を展開するウォーターヘルス・インターナショナル。途上国を含む全世界で安定して飲料商品を生産したいコカコーラ。それぞれの強みをもとにWin-Win関係を加速する手段としてインパクト投資が活用された。

 グローバル企業のCSR活動における次の一手として注目が集まる、「企業によるインパクト投資」。具体的に、どのような可能性と勝機があるのか?

 自社でインパクト投資を活用した「ベンチャー・パートナーシップ」を推進する際に、直面する課題が明らかになってきている。次項(「グローバル企業のCSR【後編】投資で行うCSRー企業ベンチャーフィランソロピーとは」)では、「企業がインパクト投資を実践する方法」として、「企業がベンチャー・フィランソロピーに取り組むべき5つの理由」を紹介していきたい。

(冒頭写真:Photo by Sarah Reid

この記事の執筆者

山口 洋一郎
Impact HUB Tokyo Investor Relations担当。慶應義塾大学を卒業後、大和証券株式会社にて個人投資家向け営業を担当。2013年にはImpact HUB Tokyoを通じてSOCAPに参加。社会的投資の分野に深い関心を持ち、2014年には国際協力NPO/Acumenの大阪支部であるOsaka+Acumenの立ち上げを主導。2014年末に大和証券を退職後、2015年2月よりImpact HUB Tokyoに参画。SOCAP Japan Teamプロジェクトをリードしている。

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