SOCAP参加者インタビュー vol.2
日本財団 工藤七子さん
SOCAP参加者インタビューシリーズ第二弾では、日本財団の工藤七子さんにお話を伺っています。前編ではSOCAPの意義やソーシャルファイナンスの潮流などについて語っていただきました。 今回は工藤さんが取り組んでいる「未来を変えるデザイン展」や、その背景にある日本のCSRについての問題意識に迫っていきます。
未来のカタチを変え得るようなプロジェクトにスポットライトを当てたい
小林 –「未来を変えるデザイン展」について教えてもらえますか?
工藤 – 2010年に行われた「世界を変えるデザイン展」の第二弾として企画がスタートしたのですが、BOPに関するプロダクトがメインであった第一回とは全然違うものになっています。 今回は「企業が起こすソーシャルイノベーション」をテーマに展示を行います。ゆくゆくは日本や世界の未来のカタチを変え得るような面白いプロジェクトとかプロジェクトのタマゴを、20個見つけて展示しようというのがコンセプトです。 ある個別の課題を解決するだけじゃなくて、その向こうにもう少し大きなビジョンがあったり、もっと他のシステムとつながって、システム自体を変化させていくようなプロジェクトをターゲットとしています。 システム内部で起きた問題を解決するというよりは、その問題を生み出すシステムそのものに影響を与えていくようなポテンシャルを秘めているものにスポットライトを当てたいんです。
コストセンターではなく、長期的な「未来への投資」としてのCSRを
工藤 – 今回のデザイン展はCSR活動にこだわっているわけではありませんが、開催の裏には日本のCSR活動に対する課題意識があります。主催者側としては、CSRはコストセンターではなく、長期的な「未来への投資」という捉え方にシフトしていくべきなんじゃないか、そういったメッセージを発信したいんです。 それはすぐにでも利益を出るものじゃないかもしれないけど、やはり企業が企業体として存続していくための、社会に何か価値を提供していくための投資なんだ、というマインドセットチェンジのきっかけにしたいなと思っています。
社会的な存在意義を見直し、企業自体の内部変革こそCSRの本質
小林 – これからの日本のCSRはどうなっていくんでしょうか?
工藤 – 日本のCSRは公害問題などが根幹にあったということもあって、これまではネガティブコントロールやマーケティングのツールとして行われてきました。 でもそうじゃなくて、ネガティブコントロールの先に、その企業の社会的な存在意義を見直し、事業活動自体の内部変革を伴っていくのがCSRの本質であり、それが私たちのいう「未来への投資」だと考えています。今これをやることで、30年後、50年後に自分の組織が社会と一緒に成長していける、そんな超長期的な投資ツールとして捉えていくべきなんだと思います。
小林 – そういったマインドセットチェンジを促すプレイヤーっているのでしょうか?
工藤 – 日本財団がやります(笑)。今の日本にはそういったプレイヤーがあまりいないというのが現状です。でも海外に目を向けてみると、かなり充実しています。例えばイギリスだと、Business in the community (BITC) という団体があります。800もの会社が自分たちでフィーを払って、ネットワークを形成し、CSRよりももっと広い概念で、社会と自分たちの接点をもつようなプログラムを多数展開しています。もともとは60年代くらいイギリスが経済疲弊して失業率がとても高かった時に、IBMとか当時の企業6社が集まって、自分たちの社会のために何かしようということで始まった組織でした。この複数企業が集まって、社会のために何かしようという動きがもっともっと日本でもでてきていいと思うんですよ。日本にもより良い社会に向けた素晴らしい活動はたくさん点在しているけれど、一つ一つが小さく完結し、インパクトが広がっていかないんです。複数企業やNPO、行政、そして市民一人一人を巻き込んでいく、そういう体制をとっていかいないと、社会の仕組みを変えたり、人々のマインドセットをひっくり返すような大きなムーブメントにならないのだと思っています。みんなが当事者意識をもって、同じ船にのって、同じ方角を目指して進んでいく、このプロセスを踏まないと未来の社会はかわらないし、このシステム自体がソーシャルイノベーションなのだと思います。これを下支えする受け皿のようなプレイヤーが重要だし、足りていないんです。そういった役割は、一つのセクターとして台頭してくるべきなのではないでしょうか。
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