おカネの流れる意味って何だろう?【前編】

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SOCAP参加者インタビュー vol.2

日本財団 工藤七子さん

 SOCAP参加者インタビューシリーズ第二弾、今回は日本財団の工藤七子さんにお話を伺いました。 アメリカの大学院で国際開発やソーシャルチェンジについて学び、仕事としても投資と助成というおカネの流れの両端を経験してきた工藤さん。SOCAPというカンファレンスそのものの意義やこれからの日本のベンチャーフィランソロピーについて語って頂きました。  

SOCAPでセッションに参加する工藤さん

 

おカネの流れの意味を追求したい

小林 – どうしてSOCAPに参加されようと思ったんですか?  

工藤 – ベンチャーフィランソロピーの最先端を見に行きたかったんです。 私はもともとは投資関係の仕事をしていましたが、日本財団に入り、投資の世界とはある意味真逆の世界で働き始めました。そういった中で、財団として社会にインパクトを与えていくにはどうしたらいいかということを考えたとき、ベンチャーフィランソロピーみたいなものに興味を持つようになったんです。形式としては助成だけど、手法としては投資のスキームを用いていく。そういったベンチャーフィランソロピーの仕組みがアメリカや世界ではどのように行われているのか、その成功や失敗を学びに行きたかったんです。また、「未来を変えるデザイン展」というものを企画していて、それのスピーカーを探したかったというのも一つの理由ですね。  

 

おカネの流れを変えようとしている二つのルーツが交わる意味

小林 – 実際にSOCAPに行かれてどうでした?  

工藤 –「ソーシャルグッドにお金の流れる仕組み」をつくろうとしている人達には大きく分けて二つのルーツがあると思っています。 一つは2010年のJP Morganのレポートを機にこの分野に一気に流れてきた、プライベートエクイティとかインベストメントバンカーなど金融のメインストリームの人達。マーケットレベルの経済的リターンも追いかけながら、社会的インパクトを生み出そうとしている投資家達。 もう一つは、すごく古くから、それこそ70年代くらいのヒッピー的なローカルバンクやNPOの人達。コミュニティビジネスに対してメガバンクではなくて市民がお金を持ち寄っていくという地域に根ざしたおカネの流れを実践してきた人達。 SOCAPに行って驚いたのは、この両者が同じテーブルに座って議論をしていたことでした。例えば、一日目のキーノートではDemocracy Collaborativeの創設者が登壇して、協同組合について延々と話をしているんです。ある意味アンチ資本主義の彼らがキーノートスピーカーとして迎えられていることに驚きました。この後のパネルでも、ローカルバンクの人達がでてきて、「インパクトインベストメントって新しいアセットクラスっていう噂をきいたけど、そんなのおかしいわ」とインパクトインベスター達に皮肉をとばし、Kevin Jonsも「(ローカルバンクの)彼女達はインパクトインベスターではないけれど、この分野で非常に重要な存在なんだ」という紹介の仕方をしているんです。パネルディスカッションでは、グラミンファウンデーションの人とインパクトインベスター達が同じテーブルで議論していました。彼らは「利益は投資家に戻すのではなくて、事業に再投資すべきだ」というグラミン型のソーシャルビジネスにこだわっていている人達。インパクトインベスター達とは思想的にはある意味かけ離れているわけです。こうした人達もちゃんと登壇させるところに、SOCAPの器の大きさを感じました。もともと私が持っていたインパクトインベスター達のクローズドなカンファレンスという感覚とは違って、そうやって古くからコミュニティファイナンスをやってきた人達も入りまじって、その対立をちゃんとテーブルの上にさらけ出すことってすごくヘルシーだと思うんですよね。SOCAPのスローガンにあるAt the Intersection between Money and Meaning の、Meaningの部分、もっと言えば思想的、哲学的な部分がカンファレンスにちゃんと組み込まれていた、というのが私にとっては驚きであり、ちょっと嬉しかったんです。ルーツの全く違う二つの流れが、お互い学び合って、何か一緒に共創していく。そこにSOCAPの魅力があるんじゃないでしょうか。  

 

(インタビュー前編終わり | 執筆  小林泰紘 @yasu_cs)  

中編では、工藤さんが手掛ける「未来を変えるデザイン展」のことや、これからのCSRについて語って頂きました。 >>中編へ

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