資本主義を超える新たな経済システムとは!?SOCAPに集う投資家たちが考える次の時代

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目指すは「21世紀版の生協」!?SOCAPが唱える資本主義革命論! 

 冒頭から革命論という、なんとも思い切った出だしですが、SOCAPのオフィシャルブログで紹介されていたガー・アルペロビッツの2012年のSOCAPでのスピーチが興味深かったのでシェアします。

 ガー・アルペロビッツは歴史学者で、90年代には日本への原爆投下の真相を研究した著書で注目集めるとともに、論争を巻き起こした人物です。現在は、New System Projectと呼ばれるプロジェクトを牽引し、米国に限らず世界が抱えているシステムレベルの課題を対話と議論を通じて解決していくためのコラボレーションプラットフォームづくりを進めています。

 さて、そのガー・アルペロビッツが2012年のSOCAPの舞台で「革命家フェロー」(!)として基調講演を行いました。こちらのブログでその全容を読めますので、関心のある方はご覧ください。
(参考URL: http://socialcapitalmarkets.net/2015/07/09/socap-voices-alperovitz/

 アルペロビッツが唱えるのは、資本家との格差を生み出す資本主義から、より個人やコミュニティに所有権(Ownership)を分散させる新たな経済システムへの移行です。米国では富裕層のトップ400人が、所得層の下から1億8000万人分の富を所有している現状がある。所有権の分離によって、地域コミュニティに帰属するべき人、資源、環境は、そのコミュニティの外の資本家によって支配され、あるべき姿を見失ってしまっている。

 SOCAPに参加する投資家達は「資本家」である自分達のお金の使い方を再考したいと考えSOCAPに集まるのです。この新たな経済システムは決して新しいものではなく、古くから続く協同組合のあり方にヒントが眠っているとアルペロビッツは説きます。同じ法人であっても、従業員が組合員としてその法人の所有権を持つことで、働く人、働く地域コミュニティにとっての価値を高め、守ることができるはずではないか。

 こうした協同組合型の法人のモデルとして、スペインのモンドラゴン協同組合が紹介されています。モンドラゴンは日本でもよく聞かれるかもしれませんが、8万5000人の従業員を抱え、家電、建築、エネルギー、テックなど、様々な業界に進出するヨーロッパ屈指の事業集団として知られています。協同組合であることから、従業員間の賃金の平等性や従業員の解雇を避ける姿勢などを追及しています。

 また、日本からはみなさんもお馴染みの生協(生活協同組合)が紹介されています。「えっ、生協?」と思う人もいるかもしれませんが、歴史を辿ると、産業革命以降、行き過ぎた資本主義を是正することを目的に、協同組合型の経済モデルを支える法規制などが整えられてきました。日本では生協や信用金庫がその例です。

 SOCAPが「インパクト投資」を通じて、お金の意義を再考しようとするのは、歴史の螺旋階段を上っているように思います。「21世紀型の生協」が次の資本主義のモデルかもしれない、と本気で議論する投資家が集まる場、というのも面白いですね。

 もちろん、こうした協同組合型の組織に対して、いわゆる資本主義では法人の所有と経営を切り分け、所有者による監督機能を確保することで生産性を上げたという側面があるわけで、一概にどちらが「良い」「悪い」とは言えません。前述したモンドラゴンでも、昨年海外家電部門が倒産するなど、国を超えて肥大化する協同組合の経営に対する課題があることも確かなようです。

 ただ一つ言えることは、SOCAPに集まる人たちの多くは、単に「インパクト投資」や「社会起業家」という流行り言葉を追うのではなく、こうした経済の歴史の中で今何が変わらなくてはいけないのかを真摯に考え、実行しようとしている人たちであるということです。投資家であり、実践者であり、そして哲学者なのです。

 お金とは何か、資本主義とは何か。今回はちょっと抽象度の高い記事でしたが、こうした哲学的な議論ができる数少ない場がSOCAPなのだと思います。

 

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