SOCAPでも取り上げられる、地域に根付いたお金の回し方
SOCAPで取り上げられるテーマの一つにNeighborhood Economyがあります。 日本語で言うと「地域循環型の経済モデル」といったところでしょうか。地域資源を活用したベンチャー企業が育ち、地域コミュニティ全体を活性化させていく。そんな世界観、それを実現する経済モデルを創ろうとしている人たちが「インパクト投資」の分野には多く参加しています。
SOCAPのオフィシャルブログで、そんな起業家/投資家の一人であるMichael H Shumanが地域コミュニティを盛り上げる資金調達について横断的にまとめた面白い記事を書いていたので、背景の補足も含めてご紹介します。
まず、Michael H Shumanについて紹介すると、彼はコミュニティ経済学の研究者であり、投資家であり、かつ起業家です。地域コミュニティと経済の主体(=企業)が密接に結びつき、互いの価値を高め合う経済モデルを構築していくことについての研究と実践をしているというマルチな活動家です。
今回取り上げるSOCAPブログ記事では、地域循環型の経済モデルを構築するために、地域コミュニティの住民が「資本家」として地域の経済活動に参加するための10のヒントを紹介して言います。詳しくは元記事をご覧頂きたいのですが、例えば以下のような提案があります。
・Credit Union(日本でいうところの信用金庫)などの地域を拠点とする金融機関に資産を移す。こうした金融機関は域内の企業に資金提供するという縛りがあるため、地域内での資金循環を促すことができる。
・地域に根ざしたベンチャー事業向けのファンドを新しく作る。これによって、地域内のベンチャーでもよりリスクテイクな資金調達ができるようになる。
・シードステージの地域起業家を支援するような「クラブ」型のファンドを作る。既存の金融機関やスキームでは適格投資家(accredited investors)しか出資できないところが多いが、そうでない人でも投資家になれる抜け道を作る。
・クラウドファンディングプラットフォームを活用したDirect Public Offeringを行う。これはいわゆる地域密着型の株式クラウドファンディングです。(Shumanは日本でも話題になった米国のJOBS Actの制定にも関わっていました。)
最後にご紹介したDirect Public OfferingはSOCAPでも複数のセッションをかけて議論されるなど、注目のテーマです。日本でもトビムシや吉田ふるさと村など、クラウドファンディングを使わずとも、地域住民に株を購入してもらい資金調達をしている企業がいくつかあります。これにより資金調達に限らず、地域の住民をファンとして巻き込み、支援を受けながら事業を共に育てていったと言われます。こうした企業をもっと増やし、地域経済とコミュニティの活性化を促進していく、というイメージのようです。(私自身勉強中なので、他にもこんな事例が日本にあるらしいよ!というのがあればぜひ教えてください!)
SOCAPに参加する「インパクト投資」のアクターの中には、こうした地域循環型の経済モデルを模索している起業家や投資家も多く集まっていて、米国に限らず世界中からベストプラクティスと挑戦から生まれる実践的なナレッジの共有が行われています。日本でも「地方創生」の波が高まっていますが、この波の前線にいる起業家や投資家と一緒にSOCAPに行けたら、きっと面白いだろうなーと思っています。
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