おカネの流れる意味って何だろう?【後編】

SOCAP参加者の様子

SOCAP参加者インタビュー vol.2

日本財団 工藤七子さん

SOCAP参加者インタビューシリーズ第二弾では、日本財団の工藤七子さんにお話を伺っています。前編中編はこちら。 今回の後編ではSOCAPを経て感じた、ソーシャルファイナンスにおける財団の役割、そして社会変革の意味についてお話頂きました。

 

Photo by Impact HUB Tokyo

 

ソーシャルファイナンスにおける財団の役割とは

小林 – これまでの話はCSRの文脈ですが、この視点って「おカネの流れをもっとソーシャルグッドな方向に変えていく」というSOCAPのテーマにもすごく通じるところがあると思います。ソーシャルファイナンスにおいて、財団の担うべき役割って何なのでしょうか?  

工藤 – 一つはコーディネーターとしての役割だと思います。現場でNPOとも企業とも話していて思うのは、NPOも企業もお互いのやり方をしているので、両者をつなぐためには、両者の言語を仲介する役割が必要だということです。財団みたいなニュートラルな組織が全体をデザインしていかなきゃいけないと考えています。

 これに関連していうと、社会に対する情報発信も財団の役目です。企業が自分の活動のことを発信するのってなかなか難しく、NPOも大きなメッセージを発信していくだけのリソースが揃っていない場合が多いです。だからそこは日本財団が第三者として企業やNPOを評価していくということの意味が大きいのかなと思っています。フロントラインにたって社会に向けて発信していくことで、おカネの流れをもっと素敵な方向にシフトさせることに貢献できるのではないかなと思っています。  

 

リスクキャピタルとしての役割を担っていきたい

工藤 – もう一つはリスクキャピタルとしての役割です。サンフランシスコでCenter on Philanthropy and Civil Society (注釈:通称PACS。Stanford Social Innovation Reviewを発行している研究機関)に行った時に胸に響いた言葉がありました。 “Be the Risk Capital of Society” これってまさに財団のやるべきことなんですよ。

 リスクキャピタルというのは、リスクを負担する資本のことで、その観点からいうとフィランソロピーマネーがリスクキャピタルとして機能していくべきでもあると思っています。DPOでもソーシャルインパクトボンドでもそうですが、やっぱり新しいことに挑戦したり、新たなスキームを取り入れるっていうのは非常にリスキーなので、そういうものも財団がリスクとってやりますから、一緒にやりましょうよ、という風にどんどん新しい変革を促していかないといけないと思うんです。

 みんなが尻込みするようなところにどうやってお金、人、情報を投入し、リスクキャピタルになれるか。財団にとってこれからの課題です。  
(注釈:DPOとはDirect Public Offeringのこと. IPOとは違い、ストックを直接パブリック、つまり誰にでも売ることができる。資金調達の幅が広がる一方で投資銀行等からのアシスタント無しで行うためコストや時間がかかる。)  

 

パワーダイナミクスの変化を問い続けること

工藤  – これはキーノートでも語られていたことなんですが、既存の権力構造に変化が本当に起きているのかって問い続けることってとても大事だと思うんです。「新しいインパクトインベストメントの時代が来ました」といって、席についてみたらみんな同じ顔ぶれであったら、それはコンセプトは変わったのかもしれないけど、結局システムチェンジには繋がらないと思うんです。

 これまで会話をしてこなかった人達が、どのようにしてぶつかり合って、新しい価値を生み出していくか。その交わりに意味があるはずです。そしてそれは、このムーブメントが本当にパワーダイナミクスを変えられるのか、という非常に重要な問いにつながっていきます。

 社会が変わるということは、関係性に変化があるということ、既存のパワーダイナミクスが覆されるということ。インパクトインベストメントにそのポテンシャルがあるのか、これはまだまだわかりません。ただ、少なくともあの場所で、これまでぶつかり合うことのなかった人達が、ちゃんとお互いをテーブルの上にさらけだして、オープンにこの問いかけが投げられていたことにはとても大きな意義があったのではないかと思います。

  (インタビュー終わり)  

 

 今回のSOCAPは “Making Meaning Matter“というテーマのもと、世界中から様々なプレイヤーが集まりました。 歴史的なバックグラウンドも異なる彼らが同じテーブルの上で、インパクトインベストメントの可能性をめぐってお互いの主張を交わしていたというそのこと自体に、SOCAPの意義があるのかもしれません。

 あんなにも様々な切り口から、「おカネの流れを社会的に良い方向へ変えていく」ことに関して議論が深められる場もなかなかありません。SOCAPを終えた今、どれだけ多くの人が本腰を入れて汗水を流せるか。それこそがSOCAPの本当の意義なのだと思います。   (執筆  小林泰紘 @yasu_cs)

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