男性中心主義のVC業界が抱えるジェンダーギャップとは?

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「本当にアクセレレーターはスタートアップを加速させるか?」そんな問いかけから始まったリサーチが、今注目を集めている。アクセレレーターとは、起業家・スタートアップ向けの育成プログラムのこと。アイデアから投資を受ける段階に至るまで多種多様なアクセレレーターが世の中には存在する。

 世間一般では、シリコンバレーにおける代表格がとりあげられやすくY Combinatorや500 Startupsの名前は読者のみなさんもよく聞くかもしれない。だが、昨今、社会的企業(ソーシャル・エンタープライズ)の世界においても多くのアクセレレーターが存在し、インパクトメイカーとなる人たちのエコシステムにおいて欠かせない存在となっている。

「ビレッジキャピタル」Village Capital の実践

 例えば、アメリカで社会起業家向けのアクセレレータープログラムを手がけてきたVillage Capital。彼らがもつプログラムの一つでは、選考を通過した12のスタートアップは3ヶ月に渡るプログラムを受け、最後に参加スタートアップ同士で互いに「デューデリジェンス(Due Deligence)を行う”Peer Selected Investment Model”と呼ばれるユニークなシード投資モデルを行っている事で知られる。

 Village Capitalは、エモリー大学のGoizueta Business Schoolとの共同研究を進めてきた。公開された情報のサマリーにある通り、Village Capitalのプログラムを受講しているスタートアップは、実際により多くの投資を受ける事に成功している事が実証されたという。

参照URL:
http://goizueta.emory.edu/faculty/socialenterprise/documents/2013_End_Summary_Final_Final.pdf

リサーチから明らかになった事とは?

 Village CapitalのファウンダーであるRoss Bairdは、Impact Alphaへの寄稿記事においてリサーチからどのような示唆が得られたかをより掘り下げてコメントをしている。Rossが特に強調しているのは、投資家サイド、アクセレレーターサイドに求められる多様性とプロセスの透明性、そしてオープンさだ。

参照URL:
http://impactalpha.com/social-enterprise-leveling-the-investment-playing-field/

 引き合いにだされているのは女性起業家への投資の実態について。Village Capitalを卒業した女性起業家が投資を受ける確率は、男性起業家の数に対して60〜80%にしか過ぎない。各事業の売り上げにおいては、女性起業家が男性起業家を20%以上上回っているにも関わらず、投資を受けづらい実態が明らかになっている。

 女性起業家が、特に直面するのは一番最初のシード投資を受ける時。事実、一度でも投資をすでに受けた女性起業家の場合、二回目以降の投資においては、男性起業家に比べてほぼ遜色ない状態であることが明らかになっている。

男性中心、多様性不足のVC業界の弊害

 これらの事実を引き起こしている背景は、男性中心的であるVC業界だ。VC業界において女性のベンチャーキャピタリストは実にわずか6%。そしてその女性ベンチャーキャピタリストは、男性ベンチャーキャピタリストに比べて、3倍以上の確率で女性起業家に投資をする事が明らかになっている。

 これらの問題は「女性」に限った問題ではない。いかに新しいアイデア・事業を後押ししていけるかという視点において、投資家サイドの多様性が決定的に不足している事こそが問題であろう。

 Rossが指摘している通り、アメリカのクラウド・ファンディングサイト、Indiegogoの成功キャンペーンの46%は女性が主導している。より多様な投資家が関わり、オープンなプロセスが担保されれば、より多彩な起業家の力が活かされるのではないだろうか。

投資家・アクセレレーターの多様性が必要!

 Village Capitalとエモリー大学のリサーチは第一段階を終え、現在次の段階に移っているという。今回のリサーチにて、アクセレレーターの卒業生はより多くの投資を受けている事が分かった。しかし、それは「アクセレレーター」を受けたからであるとは限らないというのも事実だ。

 今後のリサーチにおいては、アクセレレーターの要素をさらに分解し、選考プロセス、プログラムの各パートがいかに起業家にポジティブな影響を及ぼしているかを明らかにしていくと言う。

 日本においても社会起業家を後押しする投資スキームやアクセレレーターが多く生まれてきている。私たちが学ぶべきこと、それは多彩な起業家を後押しできる多様な投資家、そしてアクセレレーターの必要性である。

 マーケットに出回る資金量だけが問題なのではない。問われるのはエコシステムを担う人材の視点の多様さ、オープンな仕組みであると言えるのではないだろうか。

(冒頭写真:Asian Development Bank @flickr)

この記事の執筆者

山口 洋一郎
Impact HUB Tokyo Investor Relations担当。慶應義塾大学を卒業後、大和証券株式会社にて個人投資家向け営業を担当。2013年にはImpact HUB Tokyoを通じてSOCAPに参加。社会的投資の分野に深い関心を持ち、2014年には国際協力NPO/Acumenの大阪支部であるOsaka+Acumenの立ち上げを主導。2014年末に大和証券を退職後、2015年2月よりImpact HUB Tokyoに参画。SOCAP Japan Teamプロジェクトをリードしている。

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