<SOCAP体験記>SOCAP、勝負の一週間を振り返る 〜カンファレンス本番編〜

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SOCAP15 Japan Teamのオーガナイザーである山口が2年前に飛び込んだSOCAPの舞台。いち個人として刺激と仲間を求め、焦燥感を抱えて飛び込んだその舞台で彼が目の当たりにした光景、そして出会った人々とは?「SOCAP体験記」​を全3編に分けてお伝えします!!

>>「SOCAP、サンフランシスコでの勝負の一週間を振り返る 〜渡米前夜編〜」

>> 「SOCAP、勝負の一週間を振り返る〜帰国前夜編〜」

 SOCAPには、実に様々なアクターが集まります。起業家、投資家、企業、NPO、財団、行政、メディア。それぞれが様々な文脈でインパクト投資に関心を寄せて、総勢2000人が集まる光景は圧巻の一言です。カンファレンスに先立って参加者同士は専用のSNSを通して盛んなアポ取りを交わします。

 金融機関にいる身として、世界の金融機関の社会的インパクト投資の担当者と話してみたい。そう考えた私は一日目の朝から欧州の金融機関のマイクロファイナンスファンドのファンドマネージャーと話をしました。

覆された”社会的インパクト投資像”

 その彼はSOCAPのセッションにプレゼンターとして招かれている人物。そんな大物とアポが取れてしまったことも驚きでしたが、驚かされたのはその話の内容でした。彼は次の社会的インパクト投資ファンドの企画担当者であり、その資金源を担える投資家を探していました。

 日本の金融機関にいる私は、日本の社会的インパクト投資のマーケットの現状についての意見を求められました。SRIファンドや社会的インパクト投資のマーケット規模と金額。すでに存在する社会的インパクト投資商品の事例や日本のキープレーヤーをHPを見せながら必死に説明しました。

Photo by Impact HUB Tokyo

 話すこと一時間。最後は私の側から彼に、自分の抱えていた問題意識をぶつけてみることにしました。 「日本の金融機関にいる身としては、インパクト投資のフィールドはあまりにも遠く感じる。大手金融機関とインパクト投資家はこれからどんな関係性を築けるだろうか?」

 少し考えた後、彼は答えました。「私も君と同じように大手金融機関にいる身だが、ファンドマネージャーとして投資先を探す際、必ず社会的インパクト投資家の投資先をチェックしている。例えば先ほど紹介したこの投資先は、社会的インパクト投資家のAcumenの投資先だ。」その後も彼は話を続けましたが、私はそこに確かな煌めきと未来を感じました。

 将来有望な社会的企業を見出し、リスクをとって投資する社会的インパクト投資家達。さらなるスケール拡大のためにバトンを受け取る大手金融機関。そのような協力関係がすでに出来つつある事に私は感銘を受けました。もしかしたら、社会的インパクト投資の世界は自分の想像以上に奥行きのあるフィールドなのかもしれない。私は一日目から確かなヒントを得たように思いました。

垣間見えた”社会的インパクト投資の未来”

 二日目に会ったのは、アメリカの名高いアクセレレーター機関。シード期の起業家と伴走して事業化を目指すアクターです。先方からのメールでのコンタクトを受けて、私はひどく意外な思いがしました。日本で、アクセレレーターの文脈で社会的インパクト投資がトピックに挙がる事があっただろうか?私は徐々に気づき始めました。

 金融機関として、金融商品の文脈から社会的インパクト投資を見る視点はあくまでも一視点に過ぎない。ここでは、より幅広く豊かな文脈で社会的インパクト投資が議論されている。大胆で意義あるスタートアップを生むために、どのように社会的インパクト投資を活かせるか。彼らの議論はその一点でした。

 話が進む中で、私は相手が自分にコンタクトをとってきた理由を理解しました。そのアクセレレーター機関は自分たちで投資を手がけるわけではない。大手企業や金融機関と組んで社会的インパクト投資を手がける。例えば大手の教育企業と組んで、EdTech起業家に特化したプログラムを組む。プログラムの運営後、教育企業と起業家の連携や出資が模索される。それもまた社会的インパクト投資、と彼らは呼ぶ。

Photo by Impact HUB Tokyo

 これは日本で話される”ソーシャル”の文脈とは少し違うかもしれない。しかしこれも社会的インパクト投資の未来なのだ。大企業が取り組む社会的インパクト投資。それは上辺だけの表面的なCSRやプロモーションではない。社会的インパクト投資を活かして大企業として長期的な競争力を獲得する試みに他ならない。もっともっと方法はある。

 自分が今いる場所。日本、大企業。そこからできる事は、まだまだあるのかもしれない。その事に日本の大企業が気付き始めたら。それはものすごい可能性なのではないか?少しずつ私の仮説が色づけされていくのを感じました。日本の大企業や投資家に、この社会的インパクト投資のフィールドを繋ぐその橋渡しができるとしたら。そこには素晴らしい可能性が秘められているのではないか。会場からの帰り道でもホテルの部屋でも、私の脳裏にはそんな思いが駆け巡り続けていました。

>> 「SOCAP、勝負の一週間を振り返る@帰国前夜編」に続く

 

この記事の執筆者

山口 洋一郎
Impact HUB Tokyo Investor Relations担当。慶應義塾大学を卒業後、大和証券株式会社にて個人投資家向け営業を担当。2013年にはImpact HUB Tokyoを通じてSOCAPに参加。社会的投資の分野に深い関心を持ち、2014年には国際協力NPO/Acumenの大阪支部であるOsaka+Acumenの立ち上げを主導。2014年末に大和証券を退職後、2015年2月よりImpact HUB Tokyoに参画。SOCAP Japan Teamプロジェクトをリードしている。

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