- 2015-10-21
- インパクト, 投資
- Impact HUB, SOCAP, SOCAP体験記
今年で8回目を迎えたSOCAP。インパクトを生み出そうとする起業家、インパクトを追求する投資を見据える投資家たち、総勢2800人がサンフランシスコに集結しました。「インパクトを作り出す人たちの”HUB”になる」ことがImpact HUBの目的であるならば、このSOCAPは、Impact HUBネットワークの集結であり象徴でした。
今年はImpact HUB Tokyoが「Japan Team」を企画し、総勢25名が日本から参加。起業家、大企業CSR担当者、企業内イントラプレナー、社会的投資研究、社会的投資ファンドなど、実に様々。朝から晩までSOCAP会場で走り回り、夜にはAirBnBの宿泊先にて夜な夜な今後について議論、という壮絶な日々でした。
SOCAP Japan Teamを仕掛ける理由
Impact HUB Tokyoは「コワーキングスペースなんじゃないの」と思われる人もいるかもしれませんが、私達の活動はそれだけに留まりません。今回のSOCAPはまさにその志に則った事業だったかもしれません。
SOCAPの目的は「海外に行って勉強しよう」というスタディツアーではなく、「日本の次を考えるチームを作ろう」というもの。日本のインパクトメーカー達が共に世界中の実践やフロンティアにつながることで、日本の状況を一緒に変えるチームになっていく可能性を私達は信じています。
海外から学ぶだけでも、日本にだけいればよいわけでもない。日本の実践者が世界のソーシャルイノベーションの文脈に相まみえて、日本からの活躍の場を広げること。それこそがSOCAP Japan Teamの目指すところです!
2年前に参加し感銘。今年は主催側へ
今年は主催側である私も、二年前にこのSOCAP Japan Teamに、いち参加者として加わりました。それぞれの取り組みから得た智慧をSOCAPというコミュニティにシェアしあう事で成り立つ場所。
オープンに開かれたその場所に、日本人や日本企業がつながり、勝負していく事で生まれる可能性に私は強く惹かれ、今年は主催する側に立っています。
今年のSOCAP Japan Team参加の呼びかけに集まったのは16名の参加者。立ち位置は様々でありながら、誰もが真っ直ぐに自身のミッションと目標を見据えてSOCAPに向かう事に、私は大きな気持ちの高まりを感じて現地入りしました。
「チーム」で過ごすシェア経済都市サンフランシスコ
出張といえばビジネスホテルが通例ですが、今回はあえてAirBnBに共同宿泊という方法をとりました。2800人の参加者、150のセッション。膨大な情報と人と行き交う中、16人のJapan Teamの参加者はそれぞれの関心をもとに全く違った動きと成果を得ます。
現地での夜の時間は、それを互いにシェアできる貴重な時間。毎晩夜な夜な議論を重ねました。カンファレンス会場まではタクシーではなくUberで車をシェア。
毎日シェアリングエコノミーの震源地のカルチャーに触れ、その恩恵に預かりながら、一方で「AirbnbやUberの独占が始まっているサンフランシスコ」という都市のあり方も、地元の人や会場の人たちと話しながら感じて生活します。
SOCAPは「お金と意義の交わる場所」
今年度のSOCAPの参加者は実に2800人。毎年増加し続ける参加者は、起業家、企業から財団、NPOまで実に様々。アメリカ国内に限らず、60カ国以上から参加者が集まります。
4日間で行われるセッションも150以上。一時間に同時開催されるセッションは10以上。様々なテーマと問いかけから始まるセッションの数々。興味深いセッションの数々に頭を悩ませながら参加者は各セッションに向かいます。
SOCAPのコンセプトは、”The Intersection of Money and Meaning”。つまり、「お金と意義の交わる場所」。利益のみの追求に疑問を感じ始めた企業の人たちも、フィランソロピーに限界を感じ始めた財団やNPOのアクターたちも、それぞれの問題意識と哲学をもとにSOCAPに集まりました。
圧倒的な量の交流とナレッジシェア
SOCAPの特徴はそのスピード感と参加型システム。カンファレンス専用SNSが用意され、日々様々なディスカッションが行き交い、事前に用意されたセッションに毎日上書きされ、新しいセッションがリアルタイムで追加・更新されます。
Japan Teamのメンバーから挙がった企画も採用され、すぐにミートアップを開催。現在進行形でインタラクティブにコンテンツが上塗りされるのがSOCAP流。セッションに加えて行われるのが、個別アポをとってのミーティング。30分、時には15分単位で猛烈な勢いで情報交換が行われます。
自分のアポだけではなく、他のJapan Teamの面々が参加した方が良ければすぐに連絡をとってミーティングをシェア。1人対2800人ではなく、「Japan Team16人」対2800人でのコミュニケーションで臨んだ結果、望む情報や人に繋がっていく光景を毎日目にすることになりました。
日本のスタープレイヤーが切磋琢磨
今回のJapan Teamに参加した面々は、それぞれの分野で先進的な取り組みを行うスタープレーヤーばかり。起業家は、世界中の起業家と切磋琢磨するために。企業人は、事業パートナーの開拓や先進事例の吸収のために。それぞれの目標をもとに参加しています。
毎日のSOCAPの日程をこなした後の晩、今後の日本での展開について様々な議論が展開されました。面白いアイデアを日本で実現するべく、Japan Teamの中ですぐにプロジェクトチームが立ち上がることもあれば、誰かの事業アイデアや課題に耳を傾け、豪華なメンタリングタイムになる事もしばしば。
普段の仕事から離れて一週間サンフランシスコに缶詰めになる参加者にとって、それはこの上なくインテンシブな時間。ぎゅっと凝縮された時間は、吸収の時間でもあり、反芻の時間でもあり、そして今後の跳躍のために、ぐっと力をためる時間でもあります。
正解ではなく、問いを持ち帰る場所
SOCAPが終わりに近づくにつれて、参加者が口々に言葉にしたのは、SOCAPは「正解ではなく、問いを持ち帰る場所」だということ。海外の先進事例を持ち帰って日本で実行する。そんな安易なタイムマシーンビジネスだけを志向する人は誰もいません。むしろSOCAPで登壇して紹介されている事例を一つ一つ吟味して、時には賞賛し、時には懐疑的に振り返る。そんな姿勢がJapan Teamに共通して見られた姿勢でした。
Japan Teamから一番多かった問いかけ。それは「なぜ日本の先進事例を世界のために活かせないのか?」という視点。そして「なぜこのSOCAPのような場所を、日本で行えないのか」という問い。
SOCAPで壇上に挙がる事例や組織の数々。それらは時には玉石混交でもあったかもしれません。しかし、SOCAP期間中、「なぜこの壇上にいるのは日本の起業家ではないのか?」と思わされる事も、私自身一度や二度ではありませんでした。
日本から仕掛けるネクストステップを胸に
しかし、もっと日本から持ち寄れる先進事例が多く存在する事が真理である一方、世界中から2800人を集めるサンフランシスコの吸引力が圧倒的である事も事実。
それはシリコンバレーを擁する事で多くの投資家を巻き込める力。リベラルで新たな発想に寛容であり、ベイエリア特有のオープンな貢献意識をカンファレンスに息づかせる事に成功しているからかもしれません。
もし日本から何かを仕掛ける事ができるとしたら?そして日本から持ち寄れる新たな視点や取り組みとは何か?それは、何はともあれまず世界に「発信」を仕掛けていく姿勢、そしてその過程で自らの「ユニーク」さに気づいていくプロセスこそが必要ではないか。そんな議論をJapan Teamでも重ねました。
少しでも味わいたい人に、朗報
サンフランシスコで過ごした一週間。それはどこまでも濃密で前向きなエネルギーに満ちた時間でした。そんなJapan Teamのエネルギーに直に触れたいという方に朗報です!
11月以降、Impact HUB Tokyoでは、SOCAPの報告会的なセッションの準備を進めています。次にSOCAPという場所で勝負するのは、読者のあなたかもしれません。Japan Teamの参加者はSOCAPで何を思ったのか。そしてこれから何を仕掛けようと企んでいるのか?ぜひぜひ聞きに来てください!
冒頭写真 by Social Capital Markets
この記事の執筆者
- Impact HUB Tokyo Investor Relations担当。慶應義塾大学を卒業後、大和証券株式会社にて個人投資家向け営業を担当。2013年にはImpact HUB Tokyoを通じてSOCAPに参加。社会的投資の分野に深い関心を持ち、2014年には国際協力NPO/Acumenの大阪支部であるOsaka+Acumenの立ち上げを主導。2014年末に大和証券を退職後、2015年2月よりImpact HUB Tokyoに参画。SOCAP Japan Teamプロジェクトをリードしている。
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