社会的インパクト志向の傾向を強める大企業のCVC戦略
大企業の「コーポレートベンチャーキャピタル」によるグローバル展開が一気に加速しています。日本でもソフトバンク、リクルート、DeNA、Greeなど、多くの会社がCVC戦略を掲げ、ITスタートアップへの出資を通じて、現地市場へのアクセスと人材の獲得を進めています。 こうした大企業によるCVCのトレンドが、社会的インパクト投資のトレンドと重なり始めているということをご存知でしょうか。
元々、CVCは投資によるキャピタルゲインよりも、投資元事業とのシナジー効果を重視する傾向が強く、その性質は社会的インパクト投資における「ペイシェントキャピタル(忍耐強く、事業の成長を見守り、学習する)」の考え方に近いと言えます。また、CSV(Creating Shared Value)のようにCSR的な発想を経営の根幹に持ちたいと考える企業が、その延長に社会的インパクト志向のCVCを持つようです。
大企業の新興途上国における市場戦略としてのCVCと社会的インパクト投資
新興途上国市場という特殊かつ急速に変化を続ける市場環境の中で、よそ者の日本企業が0-1で事業を作るよりも、0-1を作ったベンチャーを支援・協働することを通じて、市場への理解を深め、新規事業の事業性を検証していく、そんな戦略を取る企業が世界的に増えてきたように思います。今年に入ってからJPモルガンより発表されたインパクト投資に関する最新レポートの中でも、こうしたCVCの盛り上がりを社会的インパクト投資のトレンドとして取り上げています。
CVCとインパクト投資がつながった事例として、最近では豪州SeekによるインドのBabajobへの投資が挙げられます。Seekは言わずと知れた世界最大手の求人サイトを運営するグローバル企業です。そのSeekが投資した先のBabajobはインドの求人サイトを運営するベンチャー企業で、マッチングによる低所得層での雇用創出をビジョンとすることから、Gray Ghost Venturesといった社会的インパクト投資家が初期の投資家に名を連ねていました。SeekとBabajobそれぞれのねらいは何か。SeekとBabajobの間でどのような投資契約が結ばれているのか。とても面白い動きに思います。
(参考記事) Indian Jobs Marketplace Babajob Attracts Follow-On Funding
新興途上国市場の調査に、担当チームの人件費含め、数億円使っている大企業もあると思います。そのお金をいっそ現地企業に投資してみてはどうでしょうか?そんな提案も、的外れではないと思っています。
[参考] 昨年、Volansなどによってコーポレートベンチャーキャピタルとインパクト投資のトレンドが交錯する可能性について調査したレポートが発表されました。非常に示唆に富むレポートですので、このブログでも複数回にわたって紹介していきたいと思います。
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