今年のSOCAPへの参加を決められた鳥居希さん。地元長野で起業し、クラウドファンディングやインパクト投資を活かして”市民起業家を創る”べく動かれています。何が鳥居さんを駆り立て、そしてSOCAPへ向かわせるのか?じっくり伺います。
山口 - まず初めに、今取り組まれている事、簡単な自己紹介から伺ってもよいですか?
(鳥居さん、以下鳥居)- 現在は長野県在住です。地元も長野で、大学から東京に出て15年ほど働いて、昨年地元の長野で起業をしたいと思い帰ってきました。大学の時はフランス文学をやっていたのですが、ずっと文系だったので経済の事もやってみたいと思い証券会社に就職しました。グローバルな仕事ができる外資系証券会社がよいと思い、15年間働きました。
証券会社では、株式債券の取引が終わった後の取引処理業務を始め、実務からマネージメントまで幅広く担当しました。IPOのサポート、新規ビジネスの仕組み作り、法務やITまで、様々な部署と連携しながら、部署全体のリスクマネージメントをアジアのチームと一緒にやっていました。
山口 – 証券会社を離れられた後はいかがですか?
鳥居 – 証券会社のキャリアの後は、太極拳と瞑想の会社の役員を一年間していました。プライベートでファウンダーとの出会いがあり、当時ビジネスパーソンにはまだまだ瞑想が広がっていなかったので、それを広げて行くために、福利厚生や人材研修の文脈で広げて行く事を一年間やりました。
達成したかったのは、「自分のできることで社会に貢献できることをやる。」という事です。ビジネスパーソン、パワーがある人たちが正しい判断ができるようにと。ただそこまで手応えを感じられなかった事もあり、当初の”いずれは地元に帰って起業をしたい”という目標に戻りました。長野でも新しい動きがあったので、今だ、と思って。
山口 – 伺っていると、節目節目でかなりドラスティックにキャリア転換をされているように思うのですが、心境の変化があったという事なんでしょうか?
鳥居 – 証券会社を辞めるとき、違う証券会社に転職したり、クライアント側で働くなどの選択肢もあったのですが、証券会社での仕事に慣れていたので、苦しい道を選びたいと思いやめました(笑)。先が見えない方が面白いですから。分かっている事はもういいと。選択の時は、危険そうな道を選ぶようにしているので。
山口 – 長野で起業へ。今実際にやられていること、もう少し詳しく伺ってもよいですか?
鳥居 – 動き始めて6ヶ月ほどなのですが、「社会にインパクトを与えられるか?」という問いが根底にあり、市民起業家を創っていく事をやりたいと思って動いています。その中ではアドバイザーを務めている長野県の「クラウドファンディング活用によるビジネス創出支援事業」に力を入れています。
また、これは始めたばかりなのですが、株式会社バリューブックスの経営に参画し、組織作りを含めたブランディングを行っています。古本の買取・販売を行っているのですが、その中で古本を活用してNPO・NGO、大学、自治体などのファンドレイジング(寄付集め)をお手伝いするチャリボンという仕組みやブックギフトというプロジェクトがあり、事業全体を通して古本で社会を変える、という会社です。見ていてポテンシャルを感じたので、次のステージに行くために一緒にやりたいと。この二つがメインですね。
山口 – Impact HUB Tokyo独自の起業家プログラム、Team360に参加されたそうですが、クラウドファンディングのプロジェクトはそちらでブラッシュアップしたんですか?
鳥居 – もともと東京は人が多すぎると思っていたので(笑)、どうしたら一極集中を分散させられるか、という事を手がかりにスタートしました。なのでまずは自分が長野に帰ろうと。そして長野の良い所を活かして、自然の中での教育を通して何かできないかと。ただTeam360のプログラムで掘り下げるうちに、ほんとうにサーブをしたいターゲットがずれているのではないかと気づき始めました。
なぜ自分がその事業をやりたかったのか、どういう世界が見たいのかを掘り下げていくうちに思い出したのは、自分が証券会社の時に見た”人のお金に対するパワー”でした。このパワーを社会を良くするために使えたら、と思うと大きな可能性を感じたんです。その発想にTeam360で行きついて、社会的インパクト投資に興味を持つようになりました。その流れもあり私自身が起業をするために支援もしてもらっている長野県内各地のコワーキングスペースCREEKS、HanaLab.、Knower(s)、そして行政と連携してクラウドファンディングの事業を行っています。
山口 – 軸が通りつつも、活動されるフィールドにはかなりの変化があったかと思います。例えば今活動されているフィールドでも、鳥居さんは一種異質な存在かもしれません。その中で感じる面白さ、もしくは難しさというのはあったりしますか?
鳥居 – 不思議なのは、今の方が金融のことが面白いと思うようになった事ですね(笑)例えば誰かにクラウドファンディングのことを説明するとき、自分で改めて調べているとひとつのルールを様々な目線で見れるようになっている事に気づかされます。金融機関以外に、投資家や起業家などいろいろな目線で見れるようになったかと。
難しさは、仕事を進める上でのルールの違いなどもありますが、”投資”や”インパクト”という言葉や考え方について、周りの人にどうしたらうまく伝えていけるかという事です。今でも毎日試行錯誤しています。いろいろな人を巻き込むために、それぞれの人に伝わる言葉を話さないといけませんから。
地元長野での動きを模索し、まさに起業して動き出そうとされている鳥居さん。
後編では鳥居さんがSOCAPを通して何を掴みたいと思っているのか。その動機と今後の展望に迫ります!
>>【後編】目標は、市民起業家を作ること。金融と市民の心理を組み合わすことでインパクトを起こしたい。
この記事の執筆者
- Impact HUB Tokyo Investor Relations担当。慶應義塾大学を卒業後、大和証券株式会社にて個人投資家向け営業を担当。2013年にはImpact HUB Tokyoを通じてSOCAPに参加。社会的投資の分野に深い関心を持ち、2014年には国際協力NPO/Acumenの大阪支部であるOsaka+Acumenの立ち上げを主導。2014年末に大和証券を退職後、2015年2月よりImpact HUB Tokyoに参画。SOCAP Japan Teamプロジェクトをリードしている。
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